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第1土曜特集 自律神経のサイエンス
消化管と自律神経
脳腸相関を介するストレスによるコレシストキニンの増幅作用
The amplifying effect of stress on the action of cholecystokinin via brain-gut interaction
山口 菜緒美
1
,
屋嘉比 康治
1
Naomi YAMAGUCHI
1
,
Koji YAKABI
1
1埼玉医科大学かわごえクリニック,埼玉医科大学総合医療センター消化器・肝臓内科
キーワード:
脳腸相関
,
ストレス
,
コレシストキニン(CCK)
,
機能性ディスペプシア(FD)
Keyword:
脳腸相関
,
ストレス
,
コレシストキニン(CCK)
,
機能性ディスペプシア(FD)
pp.566-573
発行日 2023年5月6日
Published Date 2023/5/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28506566
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機能性ディスペプシア(FD)は消化管障害のなかでも最も頻度の多い疾患のひとつである.FDの主な症状は食後に生じることが多く,摂食行動によって誘発される消化・吸収活動がFD発症に関与している可能性がある.コレシストキニン(CCK)は食欲や胃運動抑制作用のある消化管ホルモンであり,FD発症への関与が示唆されている.筆者らは,心理的ストレスのCCK作用への増幅効果を明らかにするために食欲,胃運動,脳神経核の活動性への影響について検討した.ラットに拘束ストレスを与えるか,ストレス関連ペプチドホルモンであるウロコルチン1(UCN1)を腹腔内注射することによりストレス負荷を行った.CCKと拘束ストレスの単独または組み合わせによる食物摂取と胃運動への影響を調べ,中枢神経の食欲制御ネットワークの神経細胞におけるc-Fos発現を免疫組織化学染色で評価した.CCKは用量依存的に食物摂取と胃排出を抑制した.拘束ストレスは,食物摂取および胃排出に対するCCKの抑制効果を増幅させ,CCKと拘束ストレスの間には相乗効果が認められた.CCKは延髄孤束核(NTS)と視床下部室傍核(PVN)神経におけるc-Fos発現を誘発し,ストレス付加により有意に増幅された.この結果は,ストレスが中枢神経を介してCCKの食欲抑制効果を増幅することを示唆しており,FDの病態機序を示した可能性がある.
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