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第5土曜特集 mRNAワクチンやゲノム編集で注目が集まる遺伝子治療
遺伝子治療技術を用いた疾患治療
グリオーマに対する遺伝子細胞療法・ウイルス療法
Cell-based gene therapy and viral gene therapy for malignant glioma
田村 亮太
1
,
戸田 正博
1
Ryota TAMURA
1
,
Masahiro TODA
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
キーワード:
悪性神経膠腫
,
グリオーマ
,
遺伝子治療
,
幹細胞
,
ウイルス
,
ゲノム編集
Keyword:
悪性神経膠腫
,
グリオーマ
,
遺伝子治療
,
幹細胞
,
ウイルス
,
ゲノム編集
pp.469-475
発行日 2023年4月29日
Published Date 2023/4/29
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28505469
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悪性神経膠腫(以下,グリオーマ)はその浸潤性・多様性や,化学・放射線療法に抵抗性のグリオーマ幹細胞(GSC)の存在により,依然として難治性の脳腫瘍である.1990年代よりグリオーマに対しても遺伝子治療が行われはじめ,近年ふたたび注目を集めている.治療遺伝子として自殺遺伝子,サイトカイン遺伝子,がん抑制遺伝子などが用いられる.血液脳関門の存在する中枢神経系では,いかにグリオーマに薬剤や治療遺伝子をデリバリーするかが重要である.そのために,ウイルスベクターや非ウイルスベクター,さらには遊走性を示す幹細胞をdelivery vehicleとして用いる方法が発展してきた.ウイルスベクターには使用報告の多いアデノウイルスベクターなどに加えて複製能を有するレトロウイルスベクターなども用いられている.幹細胞は,神経幹細胞(NSC)の臨床試験も報告されはじめている.幹細胞などに治療遺伝子を導入する方法は,同様にウイルスベクターや非ウイルス遺伝子導入法があり,最近ではゲノム編集を行うことも可能である(ex vivoゲノム編集).遺伝子治療とは少し分野が異なるが,腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)を用いた治療もかねてより行われている.遺伝子・細胞治療さらにウイルス療法,およびそれらを融合させた新たな治療法は,グリオーマの予後改善に寄与する可能性があり,おおいに期待がもたれる.
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