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特集 心筋炎――医療と医学の最前線
ウイルス性心筋炎の病原ウイルス検索手法とその意義
Methods of searching for etiological viruses of viral myocarditis and their pathological significance
平田 雄一郎
1
,
鈴木 忠樹
1
Yuichiro HIRATA
1
,
Tadaki SUZUKI
1
1国立感染症研究所感染病理部
キーワード:
心筋炎
,
ウイルス
,
polymerase chain reaction(PCR)
,
免疫組織化学
,
in situ hybridization
Keyword:
心筋炎
,
ウイルス
,
polymerase chain reaction(PCR)
,
免疫組織化学
,
in situ hybridization
pp.977-981
発行日 2022年9月10日
Published Date 2022/9/10
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28211977
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心筋組織を主座とした炎症性疾患である心筋炎の原因のひとつとして,ウイルス感染があげられる.ウイルス感染による心筋炎は,ウイルス感染による直接的な心筋傷害によるものとウイルス感染により引き起こされる宿主応答によるものに大別され,心筋炎を引き起こす機構は両者でまったく異なっている.最適な治療戦略策定のためには発症機構に基づいた病態理解が必要であり,心筋組織におけるウイルス感染の評価は病態理解の第一歩である.現在,病原体遺伝子検出技術の進歩により種々のウイルスが急性心筋炎患者の心筋組織検体から検出されることが報告されているが,通常の遺伝子検出技術では,組織内におけるウイルス局在情報は得られず,検出されるウイルスの病的意義は明確でないものが多い.国立感染症研究所感染病理部ではreal-time PCRベースの網羅的ウイルス遺伝子検索と免疫組織化学などによる組織形態学的評価を組み合わせることにより,心筋炎症例における病原ウイルス検索を行っている.ウイルス遺伝子検索で検出されるウイルスはかならずしも真の病因とは限らず,組織標本による宿主応答や病原体局在評価などをあわせて行うことにより,ウイルス感染による直接的な心筋傷害と宿主応答による心筋傷害とを区別することが可能となる.この両者を区別しつつ,個々の症例における病原体検出状況と病理,病態に関する知見を集積していくことにより,ウイルス性心筋炎の病態解明と最適な治療戦略策定の基盤が形成されることが期待される.
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