Japanese
English
特集 腫瘍と糖鎖――糖鎖の基礎研究から腫瘍の分子標的同定に向けて
はじめに
Introduction
谷口 直之
1
Naoyuki TANIGUCHI
1
1大阪国際がんセンター研究所糖鎖オンコロジー部
pp.869-869
発行日 2022年5月28日
Published Date 2022/5/28
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28109869
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タンパク質の糖鎖修飾は,リン酸化とともに翻訳後修飾として最も頻度が高いことは周知の事実である.腫瘍に特徴的な糖鎖変化を利用した腫瘍の制御やバイオマーカーとしての意義はよく知られている1-3).しかし,ゲノム,タンパク質の研究に比べると糖鎖は多様性や複雑性に富み,研究面ではまだまだ未解決の問題が多い.一方,タンパク質,脂質のほか,最近small RNAにもN-結合型糖鎖が付加されていることが報告された3).糖鎖は腫瘍細胞の発生から進展,転移に関わり,さらには化学療法や放射線療法でみられる耐性の過程においても,重要な役割を果たしている.また,がん細胞の悪性化に深く関わる上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transitio:EMT)や間葉上皮転換(mesenchymal epithelial transition:MET)においても糖鎖と糖鎖遺伝子の役割が重視されている4).がん細胞や患者血清の糖鎖変化として,N-結合型糖鎖の分岐に関わる糖鎖,シアル酸,O-結合型糖鎖,プロテオグリカン糖鎖,スフィンゴ糖脂質,GPI(glycosylphosphatidylinositol)アンカーに関わる糖鎖に加えて,細胞内のO-GlcNAcylationの重要性などが知られてきた5).また,分子腫瘍マーカーとして,AFP-L4,CA19-9(Sialyl-Lea),Dupan-2,CEA,MUC-1,CA125など多くが使用されている2,6,7)が,早期がんの診断には限界がある.
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