連載 ユニークな実験動物を用いた医学研究・Vol.14
脳のないヒドラを用いた睡眠研究
-――睡眠現象をよりシンプルに理解する
伊藤 太一
1
Taichi Q. ITOH
1
1九州大学基幹教育院自然科学実験系部門
キーワード:
睡眠
,
行動睡眠
,
刺胞動物
,
散在神経系
,
ヒドラ
Keyword:
睡眠
,
行動睡眠
,
刺胞動物
,
散在神経系
,
ヒドラ
pp.318-323
発行日 2022年1月22日
Published Date 2022/1/22
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28004318
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Summary
睡眠研究はヒトやマウスなどの哺乳類を対象として発展してきたが,近年ではショウジョウバエや線虫などの無脊椎動物をモデル生物として用いた研究も盛んになっている.その理由のひとつに,睡眠制御における分子機構の進化的保存性の高さがあげられる.ならば,より下等な動物をモデル系として睡眠研究に導入することができれば,その分子機構の解明に貢献し,さらには睡眠現象の起源にまで迫ることができるかもしれない.筆者らは最近,進化的に脳を獲得する以前の動物群である刺胞動物のヒドラにも睡眠現象が存在していることを発見した.また,その分子機構が高等動物との間で進化的に保存されていることも明らかにした.ヒドラの持つ実験動物としてのさまざまな特徴をいかすことで,睡眠研究に新知見をもたらす新たなモデル系を確立する道がひらけたといえる.
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