連載 この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症・Vol.23
多包虫(北海道のキツネとエキノコックス)
髙橋 裕之
1
,
横尾 英樹
1
,
古川 博之
1
Hiroyuki TAKAHASHI
1
,
Hideki YOKOO
1
,
Hiroyuki FURUKAWA
1
1旭川医科大学外科学講座肝胆膵・移植外科学分野
キーワード:
多包虫
,
エキノコックス症
,
アルベンダゾール
Keyword:
多包虫
,
エキノコックス症
,
アルベンダゾール
pp.728-733
発行日 2021年11月13日
Published Date 2021/11/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27907728
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Summary
◎わが国で4類感染症に指定されている多包虫症(いわゆるエキノコックス症)は多包条虫によって引き起こされる人獣共通感染症である.ヒトが偶発的に虫卵を経口摂取することで,体内でふ化し幼虫が肝臓に寄生する.肝臓に病巣が形成されるまでには長い年月を要し,初期には自覚症状がないため,偶発的に発見されるか,症状がでるほどに大きくなって発見されるかのいずれかである.加えて,エキノコックスは病巣周囲へ浸潤し多臓器へ転移することが知られており,悪性疾患として取り扱う必要がある.治療の原則は完全切除とアルベンダゾール内服であるが,完全摘除が困難でも,可及的な外科的切除とアルベンダゾール内服により,比較的良好な予後が期待できることから,可能なかぎり腫瘍切除を試みるべきである.エキノコックス症は,以前はわが国ではほぼ北海道にのみ存在する特異な疾患と考えられていたが,北海道-本州間のヒトの移動増加やペット(とくにイヌ)を介した伝播により近年北海道以外でも発生がみられるようになりつつあり,その診断方法と治療法については知っておく必要がある.
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