今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・7
エキノコックス
藤田 紘一郎
1
1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学
pp.700-701
発行日 2000年7月15日
Published Date 2000/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904424
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エキノコックス(Echinococcus)は本来キツネやイヌなどの腸管に寄生している条虫で,医学上重要なものに単包条虫(Echinococcus granu-losus)と多包条虫(Echinococcus multiloculans)がある.現在,日本では多包条虫によるエキノコックス症が北海道全域で流行しているが,最近,青森でブタ感染例が報告され,本州への感染拡大が危惧されている.エキノコックス症は1999年に施行された感染症新法では四類感染症に分類され,届け出が必要な疾患となった.
多包条虫は旧ソ連,中国,日本,アメリカ合衆国,カナダ,ヨーロッパ,トルコ,北インド,イランなど北半球に広く分布しており,患者数は全世界で10万から30万人と予想されている.北海道での終宿主における多包条虫感染率はキタキツネ17.3%,イヌ1.0%,タヌキ1.9%,ネコ5.5%を示しており(図1),このような野生動物での感染状況は,数年から10数年経てヒト患者数に反映すると考えられており,キタキツネやイヌ,ネコの駆虫も含めて対策が必要である.中間宿主はエゾヤチネズミなどの野ネズミ類,ブタ,ヒトなどである.
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