私の視点
紅斑はなぜ「赤い」?
茂木 精一郎
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1群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学
pp.747-747
発行日 2021年8月1日
Published Date 2021/8/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002581
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紅斑の色は淡紅色,暗紅色,鮮紅色などと表現されますが,この紅斑の赤い色はいったいどのような機序で生じているのでしょうか? これまでさまざまな皮膚病で機序が解明され新たな治療薬が開発されてきましたが,もっとも重要な所見である「赤い色」が生じる直接的なメカニズムについてはあまり触れられていないのではないかと思います.たとえば,アトピー性皮膚炎ではTh2細胞が活性化してIL-4,13などのサイトカインが増加して「炎症」が生じて紅斑が生じると説明されていますが,「炎症」という単語が「赤くなる」というイメージが強いためか,どのような機序で病変部の血管内に血液が増えるのか?ということについては,「ヒスタミンやプロスタグランジンなどによる血管拡張作用」程度の説明以外はあまり解明されていません.
教科書的には,紅斑は「真皮乳頭および乳頭下層の血管拡張と充血による潮紅」と解説されています.しかし,どのような機序で血管内の血液量が制御されているのだろうか? 血管が拡張するだけで血管内の血液が増加するのだろうか? 病変部では血液の流速が遅くなるのだろうか? 紅斑の色調のバリエーションは,赤血球の酸素含有量や血管拡張の度合いや深さなどが関わっているのだろうか? 急性期の紅斑では血管新生がおこるのではなくもとから存在している血管の拡張による充血が主体であるが,慢性期の紅斑では,血管新生が生じて血管量自体が増えることが主体になるのだろうか? などさまざまな疑問が生じてきます.
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