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爪部は種々の原因で変形や変色をきたす.外傷などの外的刺激や湿疹などによる爪の変形や変色は日常診療において比較的多く遭遇する. 本稿では爪部に生じる腫瘍および抗癌剤による爪障害について述べる. 爪部に発症する腫瘍は多種多様である.爪甲の色調変化のみを認める場合や腫瘤形成をおこし爪甲の変形や破壊を伴うものなど,多様な臨床形態をとる. 良性腫瘍としては色素細胞性母斑・グロムス腫瘍・後天性爪囲被角線維腫・毛細血管拡張性肉芽腫,指尖粘液囊腫などがある1).一方,悪性腫瘍としては悪性黒色腫,Bowen病,有棘細胞癌などがあげられる.これらの腫瘍は他の部位に発症した腫瘍と同様に視診や問診に加え,ダーモスコピーやエコーなどの侵襲のかからない検査を行うことにより多くの場合,診断確定が可能である.しかし診断に難渋するような場合においては他の部位に発症した病変と同様に生検術が必要となる. 生検を行う場合,爪部はとても小さな領域であり他の部位に比べ繊細な操作が要求されるとともに安易な切除は爪甲の変形や欠損を残すことがあるため,より慎重に行う必要があると考える.本項前半では爪部に認める腫瘍,とくに悪性腫瘍を中心に特徴と治療について述べる. 抗癌剤治療において皮膚障害はもっとも発現しやすい副作用の一つである.その中でも爪部の変化は爪甲の変形,変色に加え爪囲の炎症やさらには爪甲の陥入など日常生活に支障をきたすことも多く適切なマネジメントが必要となってくる.爪の障害が悪化することにより抗癌剤の治療が継続できなくなることは避けなければならない.本稿後半では抗癌剤による爪障害について述べるとともに,適切なマネジメントについての考え方を示す.(「はじめに」より)
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