特集 小児の便秘:最近の知見
Hirschsprung病術後の便秘症の管理
田口 智章
1,2
,
黒木 まどか
1
,
石井 綾子
1
,
小幡 聡
2
,
吉丸 耕一朗
2
,
田尻 達郎
2
Tomoaki Taguchi
1,2
,
Madoka Kuroki
1
,
Ayako Ishii
1
,
Satoshi Obata
2
,
Koichiro Yoshimaru
2
,
Tatsuro Tajiri
2
1福岡学園福岡医療短期大学
2九州大学大学院小児外科学分野
pp.364-370
発行日 2022年4月25日
Published Date 2022/4/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000098
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はじめに
Hirschsprung病(以下H病)術後の成績は一般的には良好とされてきた。特にSwenson法,Duhamel法,Soave法が3大標準術式として比較検討されていた時期には,どの術式も遜色ない良好な術後排便機能を有することが報告され,Swenson法では15年以上経過した195例で90%以上が正常排便状態と報告されてきた 1,2)。しかし近年,詳細な質問やインタビューがなされるようになると,30~80%の症例がなんらかの排便障害があるという報告が多くなり,完全に正常な排便機能を有する症例はかなり少ないというのがコンセンサスになってきた3)。われわれの施設でもDuhamel変法のZ型吻合の長期成績を調べたところ,Excellentなのは65%程度であった4)。また最近の前向き研究では成人期になっても便秘とsoilingが問題になっていることが判明してきた5)。経年的なフォローアップの結果として失禁やsoilingは成長とともに改善傾向がみられるが,便秘はあまり改善しない報告がある6)。われわれの施設でも18歳以上に達した症例では便秘が軽度33.3%,重度4.8%にみられた(図1)7)。便秘は軽度なものは食餌療法,整腸剤,緩下剤,漢方薬,浣腸などである程度コントロールされたが(図2)8),重度になると腹部膨満,腸閉塞,腸炎を併発し,便塊の圧迫による排尿障害もきたすことになる9)。
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