特集 入門! アタッチメントと小児期逆境体験を知る
3つの臨床像
小児のアタッチメント障害
桝屋 二郎
1,2
MASUYA Jiro
1,2
1東京医科大学精神医学分野
2東京医科大学病院こどものこころ診療部門
pp.876-880
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002469
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はじめに
アタッチメントそのものについては本特集の別稿で解説されているため,本稿では小児期のアタッチメント障害について概説する。Bowlbyが提唱した愛着理論によると,アタッチメントの定義は「子どもが特定の対象に対して築く情緒的・情愛的な結びつき」とされ,このアタッチメントは2~3歳頃までに養育者との関係のなかで形成されてくる1~3)。養育者との関係は,人が生まれて初めて築く関係であり,その関係やアタッチメントを基礎に人は他者との関係を構築していく。したがって,アタッチメントに不足や偏りがあると,他者関係・対人関係にも影響を生じ,関係を円滑に結べなくなる。これがアタッチメント障害である。なお従前からアタッチメント障害は愛着障害と邦訳されてきたが,「愛着」という言葉が「愛情」と意味が重なることもあり,本来の「アタッチメント」と異なるニュアンスで捉えられるリスクがあると指摘され,現在ではアタッチメントという語をそのまま使用することが多くなってきている4)。本稿でもアタッチメントおよびアタッチメント障害に統一する。

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