特集 アタッチメントの形成
父子間アタッチメント
前原 澄子
1
1千葉大学看護学部
pp.367-371
発行日 1989年5月25日
Published Date 1989/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207612
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はじめに
1969年に,ボウルビイ(J.Bowlby)が提唱した「アタッチメント(Attachrnent;愛着)」は,乳児が人生の最初に出会い,最も身近に養育してくれる人に向けられる情緒的な絆のことをいうものであった。そして彼が「この初期の愛着の発達途上における逸脱,失敗が,後の人格形成に影響を与え,精神疾患の原因ともなる」と指摘して以来,乳幼児を対象に,主として乳幼児と母親間の愛着が研究の主流を占めてきた。しかし,アタッチメントは,人と人との間に起こる情緒的に結びつきたいという要求であって,愛情とそれを表現する愛情行動を含めた概念で,子と母の間に形成される行動のみが対象ではない。
わが国においても,ここ10年来,母子相互作用によって形成される母子結合が注目されてきた。そして,母親がわが子に対して愛情をもつことと,子が母親に対してもつアタッチメントとから成り立っている母子相互作用の研究が進められ,多くの知見を得てきている。そして,そもそもBowlbyの研究の発端となった母性剥奪(maternal deprivation)や,母子分離(mother-infant separation)の影響について警告が出され,ケアの場面に生かされるようになってきている。
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