特集 入門! アタッチメントと小児期逆境体験を知る
アタッチメントと小児期逆境体験を知る
小児期逆境体験が子どもの人生に及ぼす影響
藤原 武男
1
FUJIWARA Takeo
1
1東京科学大学医歯学総合研究科公衆衛生学分野
pp.869-875
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002468
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はじめに
小児期逆境体験(adverse childhood experience:ACEs)を小児科医が聞いたとき,何を思うだろうか。ACEsとあえて言わなくても健康に悪い影響をもたらすに違いないだろう,なぜあえてそのようなネーミングをつけるのか,と思われるかもしれない。その指摘は正しく,小児期の環境がその後の人生に大きな影響を与えることは古くから知られている。とくに子どもの頃の環境がメンタルヘルスを含む精神的な健康状態や人格形成に影響を与えることは想像しやすい。ACEsが新しいのは,小児期の逆境体験が成人期,高齢期という長期的な時間が経った後でも身体的な影響を及ぼすことを明らかにしている点であり,また親の死や虐待,貧困といった個々のトラウマ体験ではなくその数の合計という,単純化していながらも子ども期の困難さを全体として把握できる手法を確立したことであろう。

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