特集 いまさら聞けない成長のキホン
各論
【コラム】低出生体重児の発育曲線(「医療機関退院後の低出生体重児の身体発育曲線(2022年)」)について作成の経緯とコンセプト
盛一 享德
1
MORIICHI Akinori
1
1国立成育医療研究センター研究所小児慢性特定疾病情報室
pp.1710-1711
発行日 2024年11月1日
Published Date 2024/11/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002134
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はじめに
日本の低出生体重児の死亡率は非常に低く,出生体重が1500 g未満の極低出生体重児であっても9割以上が生存退院できる1)。しかし早産・低出生体重児の体格の発育は,正期産児と比較して小さく,保護者の発育に対する不安は大きい2)。わが国では10年ごとに国により実施される乳幼児身体発育調査が行われ,この現況値を反映した発育曲線が公開されている。しかし正期産児と比べ極端に出生体重が小さな児は,標準体格値を大きく下回っていることが少なくなく,一般乳幼児用の身体発育曲線を用いた体格評価が難しい場合があった。1991年に当時の厚生省研究班によって実施された早産・低出生体重児に関する全国調査データに基づき,1994年にわが国で初めて新生児集中治療室の退院後から5歳までの低出生体重児用の発育曲線が発表された(以下,1994年版発育曲線)3)。医療機関におけるフォローアップや行政による保健指導などにおいて,この発育曲線が利用されてきたが,近年はより未熟な児の生存が可能となり,周産期医療の変化を反映した新しい早産・低出生体重児用の発育曲線の作成が望まれてきた。このような背景から,2021年から厚生労働科学研究費補助金成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(健やか次世代育成総合研究事業)「低出生体重児の成長・発達評価手法の確立のための研究」班により,新たな低出生体重児用の発育曲線(以下,本発育曲線)の作成が行われた4,5)。
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