Japanese
English
特集 小児臨床検査2024
XVI.薬物血中濃度モニタリング
1.TDMの実際
Overview of therapeutic drug monitoring (TDM) in pediatrics
辻 泰弘
1
,
長野 伸彦
2
Yasuhiro Tsuji
1
,
Nobuhiko Nagano
2
1日本大学薬学部臨床薬物動態学研究室
2日本大学医学部小児科学系小児科学分野
キーワード:
治療薬物モニタリング
,
薬物動態
,
薬物動態パラメータ
,
血中薬物濃度
Keyword:
治療薬物モニタリング
,
薬物動態
,
薬物動態パラメータ
,
血中薬物濃度
pp.780-786
発行日 2024年10月25日
Published Date 2024/10/25
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002052
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
1 治療薬物モニタリング
治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)は,1980年代より日本で普及した。1980年に躁うつ病治療薬である炭酸リチウム,1981年に抗てんかん薬とジギタリス製剤について,血中薬物濃度をモニタリングし治療に役立てること,すなわちTDMが保険点数化された。特定薬剤治療管理料は,投与薬剤の血中濃度を測定し,その結果に基づき当該薬剤の投与量を精密に管理した場合に算定する。上記のほかに,小児診療でも汎用される気管支拡張薬や抗菌薬,さらには不整脈用剤,精神神経用剤,抗悪性腫瘍剤,免疫抑制薬等が対象薬剤であり,TDMのさらなる拡大が進んでいる(表1)。薬物治療の基本は,効果・副作用,疾患の症状および進行具合など,薬力学(pharmacodynamics:PD)的効果を見極めながら,そこから逆算的に体内に存在する薬物投与量,血中薬物濃度,投与回数・間隔,1回投与量などの薬物動態(pharmacokinetics:PK)を考慮することからはじまる1)。PK解析では薬物投与後の血中薬物濃度の時間推移を取り扱う。すなわち,生体内における薬物の動きを数値および数式に置き換えた関数として表現することで,目に見える情報として得ることができる2)。本稿ではPK理論と薬物濃度がどのように小児のTDMに利活用されているのか,さらに,血中薬物濃度の診療での捉え方をできる限り数式を使用せずに論述する。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.