特集 小児科医が知っておくべき子どもの眠り
各論
基礎疾患と睡眠障害 てんかんと睡眠障害
加賀 佳美
1,2
KAGA Yoshimi
1,2
1山梨大学医学部小児科
2山梨大学医学部附属病院てんかんセンター
pp.1267-1270
発行日 2024年8月1日
Published Date 2024/8/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001805
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はじめに
てんかんと睡眠と認知機能には,それぞれ密接な関係がある(図)1)。てんかんは睡眠に関連するてんかん症候群も多く,睡眠に関連して発作が起きたり,脳波異常をきたしたりする。てんかん発作の後,睡眠を誘発することもよくある。また睡眠不足はてんかん発作を誘発することも経験的に知られている。一方で,治療薬である抗てんかん薬のもっとも多い副作用は眠気である。てんかん児は,眠気が発作を誘発し,発作閾値を低下させ,そして睡眠障害をさらにきたすという悪循環に陥りやすい。昼間の過度の眠気は,学習や行動に影響を及ぼし,認知機能障害を生じる。そして,てんかん児本人とその養育者のquality of life(QOL:生活の質)を低下させてしまう。そのためわれわれ医療者は,いかにてんかん発作を最小限に抑え,眠気を誘発させず,認知機能を保ち,QOLを上げることができるかが問われる。とかくけいれんを抑えることに必死になりすぎて,過度の眠気から認知機能を低下させ,QOLを落としてしまいがちである。発作は止まっても,社会活動ができないのであればそれは本末転倒である。そのため薬剤抵抗性てんかん児においては場合によっては,けいれん発作は残存しても,昼間の覚醒時間を保つことも時に必要な決断となる。
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