特集 完全把握をめざす小児の心疾患
先天性心疾患の基本
非チアノーゼ性先天性心疾患
田尾 克生
1
,
石川 友一
1
TAO Katsuo
1
,
ISHIKAWA Yuichi
1
1福岡市立こども病院循環器科
pp.481-485
発行日 2024年4月1日
Published Date 2024/4/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001589
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はじめに
非チアノーゼ性先天性心疾患は汎用される用語とはいえないが,チアノーゼ性先天性心疾患と対極に位置する疾患群の総称としてしばしば用いられる。その定義は「血液中に十分な酸素含有量をもつが,異常な血行動態を示す疾患」であり1),出生直後に明らかな症状を認めず,時間経過とともに呼吸障害,哺乳不良,末梢冷感,尿量の低下などが出現する疾患である。全先天性心疾患のうち79%を占めるとされ2),心室中隔欠損症や心房中隔欠損症に加え,動脈管開存症,房室中隔欠損症,Ebstein病,冠動脈異常症,修正大血管転位症などが含まれる3)。単純な左室,右室流出路狭窄疾患,弁狭窄症も該当する。肺動脈狭窄の強くないFallot四徴症は,チアノーゼがなく動脈管依存でもなく安定した状態を示すことが多いが,チアノーゼ性先天性心疾患に分類される3)。一方,大動脈縮窄,大動脈弓離断などは非チアノーゼ性先天性心疾患であるが3),体血流を動脈管に依存し,診断されずに出生後,数日たってから動脈管の閉鎖によるductal shockという重篤な症状を突然生じることもまれではない。このように非チアノーゼ性先天性心疾患は臨床徴候と必ずしも一致する分類ではないことに注意が必要である。近年,胎児診断が普及し,出生後の循環が動脈管依存か否かを出生前から判断できるようになってきてはいるが,出生後にも身体所見およびリアルタイムな経過から早期に診断を下し,適切な治療を遅れることなく開始することはきわめて重要である。
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