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特集 エキスパートが教える 小児の薬物治療
Ⅲ.疾患別
E.神経筋疾患
重症筋無力症
Myasthenia gravis
石垣 景子
1
Keiko Ishigaki
1
1東京女子医科大学小児科
キーワード:
重症筋無力症
,
アセチルコリン受容体
,
胸腺摘除
,
反復刺激試験
,
塩酸エドロホニウム試験
Keyword:
重症筋無力症
,
アセチルコリン受容体
,
胸腺摘除
,
反復刺激試験
,
塩酸エドロホニウム試験
pp.564-568
発行日 2023年11月30日
Published Date 2023/11/30
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001292
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1 疾患概念
重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は,神経筋接合部における信号伝達に携わる蛋白に対して産生された自己抗体により,神経筋接合部の破壊または,神経筋の刺激伝達が障害される自己免疫性疾患である。代表的な標的抗原はシナプス後膜のニコチン性アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor:AChR)であり,胸腺形成異常などをきっかけとして,制御性T細胞が機能不全をきたした結果の自己免疫応答が原因と推察されている。抗体がAChRに結合して補体系が活性化し,結果的にAChRや神経筋接合部が破壊される1)。もう一つの代表的な標的抗原は,筋特異的チロシンキナーゼ(muscle-specific tyrosine kinase:MuSK)抗体であるが,小児ではまれである。AChR抗体とは異なって,運動終板破壊ではなく,シグナルを阻害する神経終末機能障害が原因とされている。小児期発症例は若年性ともいわれ,一般的に18歳未満の発症を指すが,成人発症例とは異なる特徴を有する。日本など東アジアに多く,特異的HLAに規定されると考えられている。小児期発症MGの疫学情報は,1973年,1987年,2006年,2018年の全国調査から得られ2~4),小児期発症例では,5歳未満発症が多い傾向があるが,14.1%(1973年),10.1%(1987年),7.0%(2006年)から2.3%(2018年)と減少傾向にある。発症は女児に多く(女児/男児 1.5~1.6),ほかの年齢層と比較して,家族内発症が多いのも特徴的である2, 3)。
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