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1 TDMの基本
薬物血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)は,薬物治療に伴い変化するさまざまな因子を指標として,患者に個別化した薬物投与を行うことである。一般に,治療効果を最大限に高めつつ,副作用の発現を最小限とするために,薬物血中濃度が指標として用いられる。TDMは,治療効果や副作用と薬物血中濃度の間に関連性があり,治療濃度域が狭い薬物や治療濃度域と副作用濃度域が接近し,投与量・投与間隔の調整が難しい薬物が対象となる。代表的なTDM対象薬剤を表1に示す。TDMの実施には,初期投与設計・採血・投与設計の見直しのプロセスがあるが,小児・成人にかかわらず,薬物の投与量や投与間隔を決定するために必要な薬物動態パラメータを理解し,生理学的変化や病態の変化が各パラメータに及ぼす影響を考えることが重要である。代表的な薬物動態パラメータであるクリアランス(clearance)は腎臓や肝臓における薬物の排泄能を示し,1日投与量を規定する。また,分布容積(volume of distribution:Vd)は1回の投与によって薬物血中濃度が上昇する振れ幅を規定している。小児では,薬物の初期投与設計における投与量・投与間隔は成人と異なる場合があり,発達に伴うクリアランスやVdの変化に大きく依存する。小児患者の年齢区分について,医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use:ICH)の「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス:E11」では出生後日数で区分され,新生児(0~28日未満),乳幼児(28日以降~2歳未満),児童(2~11歳),青少年(12~16または18歳)に分類している1)。さらに新生児は,一般に,在胎数に応じて正期産新生児(在胎37~42週未満)と早産児(在胎37週未満)に分類される。各年齢区分の薬物動態は類似した特徴を示すと考えられるが,発達における体内動態変化の基準が明確化されているわけではない点に注意する。
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