特集 小児科医ができるアドボカシー活動~こどものこえを社会のこえにするために小児科医ができること~
総論
世界のこどもたちのアドボカシー
堀内 清華
1
HORIUCHI Sayaka
1
1山梨大学大学院総合研究部医学域疫学・環境医学講座
pp.1565-1569
発行日 2023年10月1日
Published Date 2023/10/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001136
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はじめに
世界全体でみると,2021年の1年間で500万人のこどもが5歳になる前に亡くなっている1)。1990~2021年の間に,予防接種や,肺炎・下痢・マラリアの予防や治療,栄養改善などの取り組みが促進され世界全体の5歳未満児死亡率(under-five mortality rate)は93(対1000出生)から38(対1000出生)へと半減したにもかかわらず,未だに多くのこどもが予防可能な感染症で亡くなっている(図)2)。一方で,死亡率の減少に伴い,十分に発育や発達が見込めないこどもや,障害や慢性疾患に対する継続的なケアが受けられないこども,なども問題となっており,世界のこどもの抱える健康課題は複雑化した。国際保健では,これまでは5歳未満のこどもの死亡率低減に投資が集中していたが,5歳以降から成人するまでのこどもの心身の健康,ウェルビーイングの改善にまで視野を広げる必要がでてきている。さらには,新たな脅威として,気候変動や生態系の変化によるこれまでになかった健康被害や強制的な移住のリスクが高まっていること,健康を阻害する商品や行動などを促進する商業広告の影響を受けやすくなっていることなどが挙げられている3)。社会的に弱い立場にいるこどもたちは,さまざまな外的環境の変化の影響を受けやすいものの,それら外的環境に影響を与える政策やさまざまな社会活動に関する決定への影響力は小さい。
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