特集 新しい時代の小児感染症
各論:原因微生物別
ウイルス
麻疹ウイルス,風疹ウイルス,ムンプスウイルス
竹田 誠
1
,
加藤 大志
1
TAKEDA Makoto
1
,
KATOH Hiroshi
1
1東京大学大学院医学系研究科・医学部微生物学教室
pp.641-644
発行日 2023年4月1日
Published Date 2023/4/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000865
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麻 疹
麻疹は,飛沫などによって経気道的に感染する,伝染力がもっとも強い急性ウイルス性感染症の一つである。小児のワクチン接種率が向上し,成人の患者割合が相対的に増加している。10~12日間程度の潜伏期を経て,カタル症状を主症状に発症する。カタル期の終わり頃(発熱から3日目頃)に口腔粘膜に白色斑を中心にもった紅暈状の粘膜疹(コプリック斑)がみられる。発熱から2~3日目頃にやや解熱傾向を示すが,すぐに高熱となり紅斑性丘疹が出現する。発疹は,耳介後部周辺や顔面から出現し,その後,全身にひろがる。発疹出現後4~5日程度で解熱傾向となり回復へ向かう。回復期の発疹は色素沈着を伴う。発疹出現の数日前から数日後にウイルス排出量がもっとも多い。免疫のない者が感染した場合,不顕性感染はほぼない。麻疹は,疾患そのものが重篤なうえ,重篤な合併症を伴うことがある。麻疹に罹患すると一過性に強い免疫抑制が起こり,細菌による二次感染(中耳炎,肺炎,喉頭炎など)がしばしば合併する。頻度は0.1~0.2%と低いが,急性期の終わりから回復期にかけて脳炎や脳症を合併することがある。麻疹の致死率は,途上国では5%を超えることもあり,非常に高い1)。
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