麻疹・風疹ウイルス

麻疹は，発熱，発疹，カタル症状（咳嗽，鼻汁，結膜充血）を主徴とする，ウイルス性の急性呼吸器感染症である．空気（飛沫核）感染・飛沫感染・接触感染し，その感染力はきわめて強い．約10〜12日の潜伏期間を経て，カタル期→発疹期→回復期の経過を辿る．気管支炎，肺炎，中耳炎，脳炎などの合併症を生じ，死亡率は1,000人に1人とされる参考URL1）．2015年に本邦は世界保健機関（WHO）から麻疹排除状態を認定されたが，その後，輸入例を発端とした感染拡大が全国各地で生じた．国立感染症研究所によると，国内の麻疹発生の年間報告数は2015年に35例であったが，2016年以後は年間150例以上，2019年は744例と急増するも，新型コロナウイルス感染症（COVID―19）の影響により，2020年は13例と激減した参考URL2）．ヒトの体内に入った麻疹ウイルスは，免疫を担う全身のリンパ組織を中心に増殖し，一過性に強い免疫機能抑制状態を生じるため，麻疹ウイルスそのものによるものだけでなく，合併した別の細菌やウイルス等による感染症が重症化する可能性がある参考URL1）．透析患者の麻疹の罹患状況は報告がなく，不明であるが，いったん感染すると重症化するリスクが高いと考えられる．