特集 分子標的薬を極める
総論
分子標的薬のこれから エピジェネティクス制御を作用機序とする分子標的薬
伊藤 幸裕
1
ITOH Yukihiro
1
1大阪大学産業科学研究所
pp.181-183
発行日 2023年2月1日
Published Date 2023/2/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000755
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はじめに
ヒトの身体を構成する細胞は,組織,機能にかかわらず,受精卵という1つの細胞を起源としており,共通の遺伝情報をもつ。しかし,細胞の種類や状態によって発現する遺伝子や発現量は異なる。すなわち,どの遺伝子をどの程度発現させるかを制御するシステムが細胞には備わっている。このシステムがエピジェネティクスであり,細胞機能調節や生体恒常性維持に寄与している。しかし,エピジェネティクスに異常が生じると,遺伝子発現の変化に伴い,がんをはじめとするさまざまな疾患の発症や病態の進行を促す。したがって,エピジェネティクスを制御するタンパク質は,治療標的として興味深い。実際に,エピジェネティクスを制御する化合物が,分子標的薬として医療現場で使用されている(表)1)。そこで本稿では,エピジェネティクスの基礎について簡単に紹介するとともに,エピジェネティクス制御を作用機序とする分子標的薬について概説する。
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