特集 症例から学ぶミトコンドリア病
研究の最前線と新しい治療法
チトクロムcオキシダーゼを標的とした治療薬開発
新谷 泰範
1
SHINTANI Yasunori
1
1国立循環器病研究センター分子薬理部
pp.654-658
発行日 2022年4月1日
Published Date 2022/4/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000135
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はじめに
ミトコンドリアは,約20億年前に酸素を使った電子伝達・エネルギー産生系をもった好気性細菌の一種が取り込まれ,細胞内共生を成立させて進化をとげてきた細胞小器官である。そのため,エネルギー産生をつかさどる電子伝達・酸化的リン酸化にかかわる酵素のコア構造は生物種をこえて保存され,生命維持に必須の機構となっている。電子伝達,酸化的リン酸化によるエネルギー産生の機能不全は,ミトコンドリア病をはじめとする多くのヒト疾患で認められる。呼吸鎖複合体はミトコンドリア内膜にあり,堅牢な構造をもつと考えられてきたが,近年その活性調節が可能であることが判明してきた。本稿では,ミトコンドリア呼吸鎖複合体の一つであるチトクロムcオキシダーゼ(cytochrome c oxidase:CcO)の活性調節を標的とした治療法開発についての筆者らの取り組みを紹介する。
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