特集 周産期診療コツと落とし穴
Ⅰ.母体・胎児編
(5)妊娠中・後期〔合併症妊娠〕
33.妊婦の上腹部症状をあまくみない
永井 立平
1
Ryuhei Nagai
1
1高知大学医学部産科婦人科
キーワード:
妊婦の上腹部痛
,
異常所見の認知
,
経過観察
,
再評価
,
多科連携
Keyword:
妊婦の上腹部痛
,
異常所見の認知
,
経過観察
,
再評価
,
多科連携
pp.109-111
発行日 2026年10月10日
Published Date 2026/10/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002848
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はじめに
妊娠中の腹痛は,産科診療において日常的に遭遇する症状の1つである。その多くは生理的変化や一過性の消化器症状に起因するが,上腹部痛,特に心窩部から右季肋部にかけての痛みは例外であり,慎重な評価と対応が求められる。妊婦の上腹部痛は,胆石症や胃腸炎といった比較的頻度の高い疾患から,妊娠高血圧症候群関連疾患,HELLP症候群,急性脂肪肝など,母体・胎児双方の生命を脅かす病態まで幅広い鑑別を要する。一方で,悪心・嘔吐や胃部不快感は妊娠に伴ってよくみられるため,「つわりの延長」「妊娠中によくある症状」と判断され,重篤な疾患が見逃される危険性がある。妊婦の上腹部痛は軽症にみえても重大な病態の初発症状であることがあり,早期に異常を察知し適切な対応につなげる視点が不可欠である1)。本稿では,妊婦の上腹部痛において特に見逃してはならない症状と,その診断のコツ,陥りやすい落とし穴について整理する。

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