特集 周産期診療コツと落とし穴
Ⅰ.母体・胎児編
(5)妊娠中・後期〔合併症妊娠〕
34.「お腹が張れば,すぐに子宮収縮抑制薬の投与」としていませんか?
永井 立平
1
Ryuhei Nagai
1
1高知大学医学部産科婦人科
キーワード:
切迫早産
,
子宮収縮抑制療法(トコライシス)
,
病態評価
,
治療介入
,
shared decision making(SDM)
Keyword:
切迫早産
,
子宮収縮抑制療法(トコライシス)
,
病態評価
,
治療介入
,
shared decision making(SDM)
pp.112-115
発行日 2026年10月10日
Published Date 2026/10/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002849
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はじめに
妊婦からの「お腹が張る」という訴えは,産科診療において日常的に遭遇する症状である。近年では,かつてのように「切迫早産といえばリトドリン」という単純な図式は次第に薄れ,ロングトコライシス,ショートトコライシスといった概念も一定の浸透をみせている。しかし一方で,子宮収縮という現象の背後にある病態を十分に評価し,その原因に基づいて治療方針を検討するアプローチが,必ずしも一般的になったとは言いがたい。さらに,臨床経過によっては,子宮収縮が明らかに増強している時点では,すでに病態が不可逆的な段階に進行している可能性も否定できない。近年注目されている妊娠前からのプロバイオティクスやプレバイオティクスといった予防的視点は,その可能性を示唆している。本稿では,こうした背景を踏まえ,切迫早産を「収縮が出現してから対応する病態」としてではなく,より広い時間軸と病態理解のもとで捉え直し,その治療戦略を再考したい。

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