特集 周産期の感染症対策
各論:妊娠中の母子免疫ワクチン
百日咳母児免疫ワクチンの意義:近年の乳児重症化症例をふまえて
熊谷 麻子
1
,
板倉 敦夫
1,2
KUMAGAI Asako
1
,
ITAKURA Atsuo
1,2
1順天堂大学産婦人科
2葵鐘会
pp.157-159
発行日 2026年2月10日
Published Date 2026/2/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002594
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百日咳とは
百日咳は主に Bordetella pertussisを原因菌とする急性気道感染症であり,5類感染症として全数把握の対象である。感染経路は主に飛沫・接触感染で,潜伏期間は7〜10日である。感染初期のカタル期は約2週間で,一般的な感冒様症状を呈し,その後,発作性・痙攣性の特徴的咳嗽(痙咳)を示す痙咳期へ移行する。痙咳期は2〜3週間続き,回復期を経て全経過は通常2〜3か月に及ぶ。感染力が最も強いのはカタル期であり,診断前に周囲へ伝播しやすいため注意が必要である。新生児〜6か月未満の乳児は重症化しやすく,咳嗽を認めない場合でも肺炎や脳症を合併することがある。診断には,培養検査,核酸検出法,迅速抗原検査,血清学的検査が用いられる。2025年第12週までに報告された4,200例の診断法の内訳は,培養1.3%(56例),核酸検出法59.1%(2,481例),迅速抗原検査10%(420例),血清学的検査27.4%(1,149例)で,核酸検出法が最多であった1)。治療の第一選択はマクロライド系抗菌薬である。カタル期に治療を開始すれば症状軽減および周囲への伝播予防が期待できる。痙咳期では咳嗽自体への効果は限定的であるが,伝播予防には一定の効果がある。近年,中国を中心にマクロライド耐性百日咳菌が増加しており,日本でも2024年以降,耐性菌感染例の報告が増えている。耐性菌が疑われる場合にはST合剤を使用する2)。ただし,ST合剤の構成成分であるトリメトプリムは葉酸拮抗薬であり,妊娠初期の使用には慎重を要する。

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