特集 最新の予防接種
各論
百日咳ワクチン
山本 郁夫
1,2,3
1東京大学
2群馬大学
3伝染病研究所
pp.24-26
発行日 1956年2月15日
Published Date 1956/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201645
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百日咳ワクチンには新鮮分離株,即ちLeslieand Gardner(1)の所謂第Ⅰ相菌を用いないと予防効果のない事が定説となつている。しかし,新鮮分離株とは具体的に如何なる性貭の菌を意味するかは最近まで明らかでなかつた。この事と相まつてワクチン調製上の不備,野外実験による効果判定の統計的処理の困難さ等の為,百日咳ワクチンの予防効果に対し疑義を抱いている学者も少くなかつた。しかし米国におけるKendrick(2)一派の広範,慎重な野外実験,又は英国MedicalResearch Council(3)百日咳研究委員会による追試実験により,この問題に就いては一応終止符が打たれたものと思う。これ等の点に関しては既に筆者(4)(5)が本誌その他に於て綜説を加えておいたので重複を繰返し度くない。一方本邦に於ては,文部省科学研究費による百日咳研究班(6)特に春日の研究により,百日咳菌属(百日咳菌,パラ百日咳菌,ブロンヒゼプチクス菌)の抗原分類,変異の問題が詳しく検討され,百日咳新鮮分離菌という意味が抗原上具体的に明らかにされたのである.即ちLeslie and Gardnerの第Ⅰ相菌とは莢膜(K抗原)を有する菌であり,これが培地上又は患者体内に於て容易に変異を起し,莢膜を失つた所謂第Ⅲ相菌に移行する。
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