特集 周産期における生命倫理を考える
総論
進みゆく周産期医療を支える科学技術のELSI(倫理的,法的,社会的課題)を考える
三村 恭子
1
,
武藤 香織
1,2
MIMURA Kyoko
1
,
MUTO Kaori
1,2
1東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター公共政策研究分野
2理化学研究所生命医科学研究センター生命医科学倫理とコ・デザイン研究チーム
pp.10-15
発行日 2026年1月10日
Published Date 2026/1/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002553
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はじめに
周産期医療とは,妊娠・分娩および新生児期における母体および児の生命と健康を守るための一連の医療であり,産科医療と新生児医療を一体的に提供する医療体制を意味する。科学技術の進歩は顕著であり,周産期医療においても先端的な技術を用いた画期的な治療が可能となっている。高度な技術的管理を可能とするNICUにおける超早産児の救命を例に挙げると,在胎22~23週の生育限界にあたる超早産児の生存率が,未だ低いものの改善してきている1)。その生存率は,積極的な治療介入により向上するものの,合併症や神経的な症状が残る率が高く,予後の不確実性も高い。そのため,治療により児の生存を優先するか,侵襲性の高い介入やその後の苦痛の可能性を避けるか,という新たな倫理的ジレンマが生じている2)。それまで生き続けることができなかった小さな命が助かる,という大きな希望を支える技術が,どちらを選んでも苦しみを伴う正解のない決断を迫るという構図がそこにあり,妊産婦は,まさに「道徳的先駆者」として目の前の状況を切り開いていかねばならない3)。

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