講座
新生児仮死について
名取 光博
1
1都立築地産院
pp.19-22
発行日 1963年3月1日
Published Date 1963/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202501
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1.まえがき
助産業務にたずさわる者として,いつも心掛けていなければならないことは,母児の将来の問題である.その場かぎりであってはならない.母親の予後については幸なことにだいぶ解決されてきたが,今後の大きな問題は児の予後についてである.ことに新生児期という短期間についてでなく,もっと長い期間にわたっての観察が必要となってきた.仮死で生まれた児が将来脳性小児麻痺を起こすとか,言語発達が遅れるとか,いろいろの問題が小児科領域から警告されているが,それは当然私たち産科の立場からも予想されるのであるから,そのような後障害を起こさないような仮死蘇生法を行なわなければならない.たとえ,後障害が発生するとしても,それを最少限にとどめるように努力すべきである.
温度刺激を与えるため,温湯と氷水とに交互に浸すような蘇生法の時代からみれば,今日の蘇生器を使用しての蘇生法は画期的進歩といえる.産科医や助産婦が突発的に,その処置を迫られるものの一つとしての新生児仮死蘇生法は十分検討し,その手技に習熟し,いつでも対処できる用意をしておかなければならない.
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