特集 周産期の画像診断 第3版
新生児編 Ⅰ.超音波診断 B.心エコー
新生児遷延性肺高血圧症
武岡 真美
1
,
澤田 博文
1
TAKEOKA Mami
1
,
SAWADA Hirofumi
1
1三重大学医学部附属病院小児科
キーワード:
新生児遷延性肺高血圧症
,
心エコー検査
,
三尖弁逆流
,
左室平坦化
,
右左短絡
Keyword:
新生児遷延性肺高血圧症
,
心エコー検査
,
三尖弁逆流
,
左室平坦化
,
右左短絡
pp.330-334
発行日 2024年12月23日
Published Date 2024/12/23
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001871
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
概念と病態
出生前の胎児では,肺胞は肺液で満たされており,高い肺血管抵抗(pulmonary vascular resistance:PVR)のため,肺血流が著しく少なく制御され,卵円孔や動脈管での右左短絡を特徴とする胎児循環が維持されている1,2)。胎児期の高いPVRは,胎児肺胞を満たす肺水,低い酸素分圧,endothelin-1,platelet activating factor,Rho A-Rho kinaseなど血管収縮系シグナルの亢進,一酸化窒素(NO)やプロスタグランジン(PG)の血管拡張系の低下が関与している1)。出生後,呼吸開始によって,肺血管拡張と動脈管収縮がもたらされ,右室から駆出された血液は肺胞へと導かれるようになる。肺血流増加による血管内皮でのshear stressと酸素分圧の上昇により,内皮型NO合成酵素の活性化とホスホジエステラーゼ5型の酵素活性の低下が生じ,血管平滑筋は弛緩する。PGでは,主にプロスタサイクリン(PGI2)によりアデニル酸シクラーゼが活性化し,平滑筋弛緩に寄与するとされるが,出生後のPVR低下には,NO経路の関与が強いとされている。肺血管拡張により,PVRは,生後しばらく低下を続け,通常,2~3週間で成人と同様になる1)。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.