特集 周産期における研修医・新人助産師/看護師教育の必修知識 新生児編
新生児の代表的疾患 TORCH症候群
隈本 大智
1
,
落合 正行
1
KUMAMOTO Daichi
1
,
OCHIAI Masayuki
1
1九州大学大学院医学研究院成長発達医学
pp.365-369
発行日 2024年3月10日
Published Date 2024/3/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001482
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TORCH症候群とは
TORCH症候群は母児垂直感染により発症する先天性感染症の総称である。病原体の頭文字を由来とし,トキソプラズマ(Toxoplasmosis),その他(Others:梅毒,B型肝炎ウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルスなど),風疹ウイルス(Rubella),サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus),単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)を指す1)。これらの先天性感染症により,中枢神経系障害,子宮内胎児発育不全や肝脾腫など共通する症状や,病原体に特徴的な症状を呈する(表1)2)。先天異常の約2~3%はTORCH症候群等の周産期感染症に起因すると考えられており3),予防と早期診断が重要となる。風疹ウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス,B型肝炎ウイルスはワクチンで予防できるが,ワクチンのないサイトメガロウイルスやトキソプラズマなどは母親の感染予防が重要であり,社会への更なる認知が求められる。早期診断は,母体の検査所見や児の症状があれば精査から診断に至ることも可能であるが,症状が乏しい例も少なくない。妊娠高血圧症候群などの明らかな要因のない子宮内胎児発育不全(特にsymmetrical type)や,新生児聴覚スクリーニング再検例では,TORCH症候群を考慮する。母親の検査所見や生活歴の再確認,頭部画像検査が診断の手助けとなる。血液検査では肝機能異常や血小板減少,total IgM≧20mg/dLは先天性感染症を疑う。
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