臨床医のプライマリ・ケア 産科診療における偶発合併症対策
児に影響を及ぼす感染症—TORCH症候群への対策
鈴木 雅洲
1
,
浜崎 洋一
1
Masakuni Suzuki
1
,
Yoichi Hamazaki
1
1東北大学医学部産科婦人科学教室
pp.687-690
発行日 1982年9月10日
Published Date 1982/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206684
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近年の感染症に対する化学療法剤の進歩には,いちじるしいものがあり,それに伴い細菌性疾患や結核・梅毒などの慢性疾患が妊娠に与える影響がきわめて少なくなって来たと同時に,ハイリスク妊娠に対する管理・治療の発達や新生児管理の進歩により,未熟児の救命率のいちじるしい上昇が認められてきた。現在残されている問題は,2,500g未満の出生によると思われる,多くの新生児死亡であり,これらは,母体に全く症状を示さないか,または,とるにたらない症状を示す感染によるものが大部分を占めていると思われる。胎児新生児に致死的効果を示さない多くの感染は,中枢神経系の障害を起こすと考えられ,特に胎児に対しては,妊娠初期の器官形成期(臨界期)における特定の微生物感染は,母体には重篤な感染症状を示さず,胎児先天異常の原因となりうる。妊娠全期間を通じて持続的に発育・発達する中枢神経系は,妊娠後期の感染でも,胎児の発達障害・発育遅延をきたす可能性があり,母体が何らかの感染症に罹患すれば,多くは胎児にも感染することが考えられ,胎児の先天感染により,胎内死亡児・先天異常児・先天感染児や発育遅延児を出産しうる。従って,胎児に影響を及ぼす感染症に対して,予防・診断法などを確立することが,一般臨床医の混乱や妊婦への不安を解消することとなりうるが,現在各種施設で行なわれているTORCH検査法が必ずしも正しいとは言い難いことが昭和57年2月に厚生省心身障害妊婦管理研究班により開催された「TORCH症候群検査法」の講習で話題になり,そのことを中心に述べてみたい。
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