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FGRの診断
胎児発育不全(fetal growth restriction:FGR)は,子宮内で胎児の発育が何らかの原因により障害され,週数相当の発育ができなかった状態と定義されている1~3)。以前は子宮内発育遅延(intrauterine growth retardation:IUGR)とよばれていたが,現在は「胎児発育不全」で統一されている。わが国では日本産科婦人科学会含め日本超音波医学会においてもFGRの明確な定義は定められていない。産婦人科診療ガイドライン産科編2023では「出生時体重基準曲線ではなく,胎児体重基準値を用い,−1.5SD以下をFGR診断の目安とする。胎児体重の経時的変化,胎児腹囲,および羊水量なども考慮して,FGRを総合的に診断する」と示されている4)。正確な診断のために妊娠初期計測等を参考に分娩予定日(妊娠週数)の決定方法などの再確認が必要である。一方,新生児においては在胎期間別出生児体格標準値を用いて出生体重または身長が10パーセンタイル未満の場合には,light for gestational age(LGA,体重のみ10パーセンタイル未満)およびsmall for gestational age(SGA,体重・身長ともに10パーセンタイル未満)とされており,産科臨床の場においてしばしば混同されている。FGRは胎児に関しての診断であり,LGAやSGAは新生児に関しての診断であることから,根本的には異なるものである。FGRの国際的な診断基準も明確には定められていないが,米国産婦人科学会(ACOG)では,「胎児の推定体重または腹囲が10パーセンタイル未満」であるものをFGRと定義しており,そのなかでも「3パーセンタイル未満」のものを重症なFGRとしている1)。
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