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はじめに
近年,生殖補助医療の飛躍的な進歩と普及のため,多胎妊娠は急増している.多胎妊娠は母児双方の予後や合併症の頻度を考慮すれば,それ自体ハイリスク妊娠である.リスクの高い1絨毛膜2羊膜性双胎(monochorionic diamniotic twin:MD双胎)や1絨毛膜1羊膜性双胎(monochorionic monoamniotic twin:MM双胎)はもちろん,双胎としてはリスクの低い2絨毛膜2羊膜性双胎(dichorionic diamniotic twin:DD双胎)でも単胎よりはるかに種々のリスクが高いので,総合周産期センターや地域周産期センターのような高次の医療機関で管理すべきである.
多胎妊娠の管理上の問題点は種々の合併症が高率に発症することであるが(表1),最も頻度の高い合併症は切迫早産と胎児発育不全〈子宮内胎児発育遅延(intrauterine growth ristriction:IUGR)の程度が重症ならばターミネーションの適応となり,IUGRも早産の要因となる〉である.早産に関しては,その発症メカニズムが明らかになり,その診断・管理法はこの10~20年で大きく進歩してきた.これに対し,胎児発育不全に関しては,その病因・病態についても不明な点が多々あり,さまざまな管理・治療法が試みられてきたが,いまだに管理・治療法が確立したとはいいがたい状態である.本稿では,これまでに得られた知見をもとに,各リスク因子の胎児発育不全に至るメカニズムと具体的な予防・治療法について述べる.しかし,胎児発育不全の原因は多岐にわたり,かつその病因・病態が必ずしも明らかでないため,これを正確に予知し,予防・管理・治療していくことが難しいことを断っておく.
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