増刊号 周産期診療のための病態生理
[産科編]
胎児発育の異常
胎児発育不全児の代謝はどこまでわかっているか
田中 佳世
1
,
田中 博明
1
,
池田 智明
1
TANAKA Kayo
1
,
TANAKA Hiroaki
1
,
IKEDA Tomoaki
1
1三重大学大学院医学系研究科産科婦人科学
キーワード:
胎児発育不全
,
低血糖
,
カテコラミン
,
生活習慣病
Keyword:
胎児発育不全
,
低血糖
,
カテコラミン
,
生活習慣病
pp.206-208
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001277
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基本病因,発症機序,解剖学的背景
胎児発育不全(FGR)となる原因はさまざまであるが,共通の病態背景として,子宮胎盤循環から胎児への酸素ならびに栄養の供給が低下していることが挙げられる。子宮内において酸素・栄養の供給が制限されると,胎児はその環境下で生存していくために,代謝・内分泌機構を変化させ始め,さらに長期化すると胎児組織が低酸素・低血糖に曝されるため,酸化ストレスの増加などの全身反応が促進される1,2)。その結果,成長の鈍化と代謝的適応という2つの主要な生理的反応が必要に迫られて起こる。成長を遅らせることで,胎児にかかる全体的な代謝負荷を減らし,脳や心臓などの必須臓器に優先的にグルコースや乳酸,アミノ酸を利用できるようにする。骨格筋と肝臓の重量はどちらも胎児総体重に占める割合はわずかである(骨格筋:約10%,肝臓:3~4%)が,これらの組織は胎児の総酸素消費量の40~50%を占め,胎児の最大の代謝器官のうちの2つとして重要性が強調されている3)。したがって,FGR児では,肝臓や骨格筋の重量が少なく生まれてくる。
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