増刊号 周産期診療のための病態生理
[産科編]
妊娠による母体の変化と妊娠維持
血液凝固線溶系の変化は? なぜ血液凝固線溶系は変化するのか
森下 英理子
1
MORISHITA Eriko
1
1金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻病態検査学
キーワード:
フィブリノゲン
,
プロテインS
,
過凝固
Keyword:
フィブリノゲン
,
プロテインS
,
過凝固
pp.13-17
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001227
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妊娠に伴う血液凝固線溶系の変化は?
1 凝固因子の変動
妊娠に伴う母体は,解剖学的にも生理学的にもホルモンの変化に伴い劇的に変化する。凝固因子の中で最も血中濃度の上昇が顕著な因子が,第Ⅷ因子(FⅧ)とフィブリノゲン(Fbg)である。特にFⅧは根木らの検討1)ではvon Willebrand因子とともに非妊娠時の約3~4倍程度まで増加して分娩時にピークとなり(図1),分娩後は速やかに減少し2~3週間で非妊娠時の値に戻る。このFⅧの著明な増加により,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が短縮傾向となり,妊娠中のヘパリン療法のコントロールを困難にさせている1)。
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