特集 胎児・新生児の消化管機能と消化管疾患
各論
壊死性腸炎
福本 弘二
1
FUKUMOTO Koji
1
1静岡県立こども病院小児外科
pp.1636-1639
発行日 2023年11月10日
Published Date 2023/11/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001163
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病態生理
壊死性腸炎(NEC)は,新生児消化管穿孔の代表的な疾患で,極・超低出生体重児に多く発症する。また,重症心疾患の患児にも認められる1)。未熟な腸管に循環不全,細菌感染,経腸栄養,ストレスなどが加わり広範な腸管壊死を起こすと考えられている2)。近年では,早産児において腸粘膜上皮が低酸素,腸内細菌叢の異常による炎症,離れた部位での感染などの強いストレスや機械的損傷を受けたときに,粘膜上皮内で高発現するtoll like receptor 4の関与が報告されている。Toll like receptor 4は上皮細胞のアポトーシスを優位に導くと同時にエンテロサイトの遊走を阻害して腸粘膜上皮を菲薄化させるため,粘膜でのバリア機構が破綻してbacterial translocationが起こり,粘膜下の自然免疫機構が活性化され,炎症性サイトカインが放出される。これが細胞壊死をきたすが,壊死細胞から放出されたタンパク質が免疫細胞を刺激し,さらに大量の炎症性サイトカインを放出してサイトカインカスケードが形成される3,4)。予防としては,母乳やドナーミルクによる正常腸内細菌叢の確立,プロバイオティクスの投与,ラクトフェリン投与による抗菌作用,グルタミンによる粘膜のバリア機能保全や免疫保護作用などが行われる2,4)。
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