特集 妊産婦死亡の現状と削減に向けた対策
総論
妊産婦急変時の初期対応―施設の医療安全の視点から
村越 毅
1
MURAKOSHI Takeshi
1
1聖隷浜松病院総合周産期母子医療センター産科
pp.325-330
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000810
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はじめに
「妊産婦死亡をゼロにしたい」,これは産科医療にかかわる誰もが思う目標であるが現実にはどうしても救いえない命も存在する。しかし,少なくとも「救いうる妊産婦死亡をゼロにする」ことはわれわれの日頃の努力で可能だと信じている。妊産婦死亡を減少させるためには,妊産婦死亡の現状を把握し,それに対して個別に対策を立てることとなる。妊産婦の急変をいち早く認識し初期対応を行うことが妊産婦死亡を防ぐためには重要である。個別の疾患や対応を熟知することは基本であるが,個々のスキル(技術や知識)を上げるだけでは対応できないこともある。そのため,分娩に関わる医師,助産師,看護師のスキルアップのみならず,多職種が連携しチームとして対応することが大切であり,病院での妊産婦急変時の初期対応に対するシステムや搬送基準などの策定も重要である。また,地域においても救命救急に対するネットワーク作りの仕組みも大切である。送り手も受け手を意識した管理や搬送が必要であり,受け手も状況に合わせて施設のパワーをフルに使えるようなシステムが求められる。
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