増刊号 191の疑問に答える周産期の栄養
新生児・乳児の栄養
2.母乳栄養
4)母乳栄養と感染症
磯部 裕介
1
,
宮入 烈
1
Isobe Yusuke
1
,
Miyairi Isao
1
1浜松医科大学小児科
キーワード:
母乳栄養
,
感染症
,
human immunodeficiency virus(HIV)
,
human T-cell lymphoma virus-1(HTLV-1)
,
cytomegalovirus(CMV)
,
severe acute respiratory syndrome coronavirus-2(SARS-CoV2)
Keyword:
母乳栄養
,
感染症
,
human immunodeficiency virus(HIV)
,
human T-cell lymphoma virus-1(HTLV-1)
,
cytomegalovirus(CMV)
,
severe acute respiratory syndrome coronavirus-2(SARS-CoV2)
pp.596-599
発行日 2022年11月18日
Published Date 2022/11/18
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000648
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母乳栄養に伴う免疫系の成熟
新生児は母乳栄養で育てられることを前提としており,その有益性は死亡率の低下への寄与など多くの検討に支持されている1)。母乳には栄養成分のみならず,免疫グロブリン,免疫担当細胞,幹細胞,エクソソーム,サイトカインなどが存在し,また授乳を通した腸内細菌叢の確立,母子愛着形成まで多様なメリットがある。感染症に対する防御能の確立にも母乳は関わっており,母体でプライミングをうけたB細胞が乳児において免疫グロブリンを産生し,母体由来の免疫担当細胞が免疫寛容状態にある新生児の腸管を通過して体内に分布する母児共通の粘膜免疫系構築のプロセスが提唱されている。このように遺伝的に由来の異なる少数の細胞が体内に定着し存続している現象(microchimerism)が関与しているという傍証が積み重なってきている1)。さらに母乳中に含まれる細菌叢は新生児の腸内細菌叢の確立を促し,母乳中のオリゴ糖がこれを促進し,常在菌層も免疫の構築などに寄与する可能性が示唆されている。
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