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I.HIV感染症の概念
HIV-1(human immunodeficiency virus 1,ヒト免疫不全ウイルス タイプ1)あるいはHIV-2を病原体とする感染の全経過がHIV感染症として捉えられるが,その症状は,感染後まもなく一部の患者にみる急性期症状,急性期症状の有無にかかわらず引き続いてみられる無症状感染,さらに病期が進行して細胞性免疫能の低下をきたしカリニ(Pneumocystis carinii)肺炎などの日和見感染症の発症,カポジ肉腫などの二次性悪性腫瘍の発生あるいは神経障害を発現するなど多彩な様相を呈する。本症の本質はHIVがCD4陽性細胞(主としてTリンパ球)に感染し,免疫担当細胞の機能障害や破壊をきたす結果,免疫不全に陥ることにある。AIDS(acquired immunodeficiency syndrome)はHIV発見以前に定義された疾患概念であるが,HIV感染症が進行した結果,日和見感染症,カポジ肉腫などの悪性腫瘍あるいはHIV脳症などの指標疾患(indicator disease)を伴った病態に相当する。
HIV感染症の病期,病態を分類する方法として1980年代にCDC分類とWalter Reedステージ分類が提唱され,その後WHOステージ分類(1990),CD4陽性Tリンパ球数を診断基準に入れたCDC新分類(1993)などが続き,分類相互の対照表も作成されている。わが国では,1988年「サーベイランスのためのAIDS診断基準」が作成され,その後1994年と1999年にその見直しも行われた。現在,わが国ではCD4陽性Tリンパ球数を診断基準としては採用しておらず,一方CDCが新分類で取り上げた肺結核,反復性肺炎,浸潤性子宮頸癌は指標疾患として取り入れている。現行の「サーベイランスのためのHIV感染症/AIDS診断基準」(厚生省エイズ動向委員会,1999)を表1に示す。なお,この基準はサーベイランスあるいは届け出(HIV感染症,AIDSともに感染症法による全数把握5類感染症)のための診断基準であり,治療の開始などの臨床指標になるものではないことに注意する必要がある。
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