増刊号 191の疑問に答える周産期の栄養
新生児・乳児の栄養
2.母乳栄養
3)冷蔵および凍結母乳の利用(母乳バンクを含む)
櫻井 基一郎
1
Sakurai Motoichiro
1
1千葉市立海浜病院小児科
キーワード:
母乳バンク
,
ドナーミルク
,
保存母乳
Keyword:
母乳バンク
,
ドナーミルク
,
保存母乳
pp.593-595
発行日 2022年11月18日
Published Date 2022/11/18
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000647
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新生児にとって母乳は最良の栄養である。特にNICUに入院している病児,早産児にとっては経腸栄養を円滑に進めるためにも重要である。母乳は人工乳と比較して壊死性腸炎の発生が有意に少ないのみならず,腹部膨満の軽減や栄養吸収率の面でも優れている。母乳はその免疫学的効果から冷蔵冷凍や解凍の過程を経ない母乳が最もよい。しかし,NICUでは持参された母乳をただちに使用する場合もあるが,冷凍保存後に自然解凍してから使用する場合が多い。保存母乳には搾乳してそのまま冷蔵している母乳(新鮮母乳),搾乳後にただちに冷凍した母乳(凍結母乳)があり,凍結母乳を解凍し冷蔵保存中の母乳(解凍母乳)がある。母乳は冷凍すると,分泌型IgAや蛋白などはあまり影響を受けないが,マクロファージや好中球の機能は低下する。そのため,児に与える場合には新鮮母乳を優先させるべきである。また,解凍方法によっても成分が影響を受けてしまう。特に母乳中の胆汁酸刺激リパーゼは熱に弱いため,加熱すると失活してしまう。ほかにも電子レンジで高温とすると栄養成分にも影響を与えてしまうため避けるべきである。そのため冷蔵庫内での自然解凍がよく,もしくは微温での解凍が選択されている。また,児に与える際に加温する際も37℃未満の温度とするほうがよい。
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