特集 周産期と最先端サイエンス
総論
情報伝達技術(ICT)の医療分野での活用
山本 隆一
1,2
YAMAMOTO Ryuichi
1,2
1一般財団法人医療情報システム開発センター
2自治医科大学
pp.944-948
発行日 2022年7月10日
Published Date 2022/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000233
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はじめに
医療は人が人に対して行うことが基本であり,きわめて人間的な行為といえる。コンビニのセルフレジのように,人が介在しないサービスもコロナ禍もあり,広まりつつあるが,健康や医療の世界では,単純な健康チェックやスクリーニング的な問診であれば,機械的な処理も不可能ではないが,健康上の問題を抱え悩んでいる患者への対応は,人の介在が必須であろう。それにもかかわらず,医療や健康管理へのデジタル技術の導入は活発に議論されており,さまざまな分野で実際に導入も進められている。これは医療が,コンピュータの助けを借りるか借りないかにかかわらず,情報の処理が大きな比重を占めていることによると考えることができる。帝王切開でメスを入れる瞬間に情報処理が行われてはいないが,経腟分娩のリスクを評価し,帝王切開を選択するためには,母体や胎児の状態をさまざまな診察や検査で情報を収集し,情報を処理し,方針を決定しなければならないし,帝王切開後の評価も同様である。内科的な疾患であれば,ほぼすべて情報処理といっても過言ではない。さらに,検査技術や診断技術の進歩により,処理しなければならない情報量は日々増加している。人の脳だけで情報を整理し,処理することは難しくなりつつある。また,わが国では国民皆保険制度のサスティナビリティを確保するために,医療や健康管理の分業化が進み,さまざまなステークホルダーの間での情報共有も必要で,情報量の増加と相まって合理化が避けられない。
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