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現在の職場に身をおいて30年近く経ったためか,私が所属した初期の頃と現在とでは,職場の雰囲気が随分変化したことを実感している.もちろん医療の質も向上し,それにつれて医療にかかわる仕事量も増加した.しかしそれに加えて人の意識も変化し,価値観も変化したように思う.20年前から比べても,携帯電話やインターネットが普及し,情報伝達スピードは格段に速くなった.しかし,その情報の質や咀嚼度はどうであろうか? むしろ情報の大海から不必要な情報をすばやく捨て去り,有益な情報のみを選択する能力が求められてきている.このようなスピード感のためか,まわり道が許されないような雰囲気となり,あわただしく時間が過ぎ去っていく.大学は,以前はむしろ経済や効率などとは異なる価値を求めていたと思うが,日本全体が経済的に萎縮してきたせいか,あるいは市場原理が大学にまで蔓延してきたせいか,最近では大型外部資金を獲得することが最も重要視されるようになってきた.加えて,新臨床研修制度の導入に代表されるような制度の変化もあいまって,さらにその傾向に拍車がかかっている.このような中で,どのような医療情報や技術を,後輩に今後いかに伝えていくべきかということを幅広く考えてみたい.
1. 情報内容について
電子カルテが導入され,また臨床写真も容易にそれに取り込めるようになって以来,皮疹の現症のとり方はかなりおろそかになってきているように思える.私自身パソコン入力が大変遅いせいもあり,現症が貧弱になってきたと自覚している.入局1年目の研修医には,私の外来に側診係としてついてもらい,いわゆるon the job trainingで現症の取り方を学んでもらっている.ただし研修医は,どうしても入力に手をとられ,学生より遠い位置から観察したり,学生のあとに触診せざるを得なくなる.が,割り込んででも,患者さんをよく見てほしいと思っている.
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