連載 ABR―深く理解し,正しく判定するために―
人工内耳手術とEABR:内耳奇形・CND症例における術中検査
山崎 博司
1
Hiroshi Yamazaki
1
1京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科
キーワード:
人工内耳手術
,
術中EABR検査
,
内耳奇形
,
CND
Keyword:
人工内耳手術
,
術中EABR検査
,
内耳奇形
,
CND
pp.335-340
発行日 2026年3月1日
Published Date 2026/3/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000002048
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はじめに
人工内耳は,補聴器の効果が乏しい重度・高度難聴者に対する聴覚補聴の手段として広く普及している。人工内耳の適応となる難聴児の約2割が内耳奇形または蝸牛神経低形成(CND)を有しており1),この集団における人工内耳装用効果は,環境音の検知に限定されるものから音声言語のみでの会話が可能なものまで個人差が極めて大きい2)。奇形症例では,人工内耳刺激のターゲットである蝸牛神経線維やらせん神経節細胞の分布と数が通常の内耳とは異なるため3),この病理組織学的な個人差が人工内耳の効果に影響を及ぼしていると考えられる。これら奇形症例において良好な人工内耳の効果を得るためには,①適切な位置に電極アレイを挿入し,②十分な聴性反応を得ることができるように人工内耳の刺激強度を設定(マッピング)することが不可欠である。小児の言語発達には臨界期(critical period,sensitive period)が存在するため4),術後早期の装用効果の差が,そのまま児の言語発達に影響を及ぼしうる。音への反応が極めて未発達な乳幼児において,聴性反応だけを頼りに適切なマッピングを行うには限界があり,他覚的検査の併用が望ましい。本総説では,内耳奇形およびCNDを伴う小児人工内耳症例において,術中electrically evoked auditory brainstem response(EABR)検査が他覚的神経機能評価としてどのような役割を果たしうるかを,筆者らの報告を中心に概説する。

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