連載 古典あれこれ
航空医学と空間識失調─Robert Bárányの業績を中心に─
水足 邦雄
1
Mizutari Kunio
1
1東京女子医科大学附属足立医療センター耳鼻咽喉科
キーワード:
Robert Bárány
,
空間識失調
,
平衡機能検査
Keyword:
Robert Bárány
,
空間識失調
,
平衡機能検査
pp.1390-1391
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000001848
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はじめに
飛行技術の進歩により,航空機は高速かつ長距離の移動を可能にしたが,人間の感覚器官は本来,地上での生活に最適化されており,空中環境における運動や重力変化には適応しきれていない。この感覚的な限界が,“空間識失調(spatial disorientation:SD)”と呼ばれる現象として現れる。SDは,操縦者が自身の姿勢・運動状態を正確に認識できなくなる状態であり,操縦判断の誤りや航空事故の引き金となり得る。航空医学の分野では,このSDの発生機序と予防策の理解が不可欠とされている。その基礎的理論を確立したのが,神経耳科学の先駆者であり,内耳前庭機能の研究でノーベル賞を受賞したRobert Bárányである(図1)。
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