皮膚科学の流れ 人と業績・5
Robert Willan
高橋 吉定
pp.496-499
発行日 1970年5月1日
Published Date 1970/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200661
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(前号から続く)
Willanの,巨匠の名にふさわしい広汎な業績のうちから,ある特別の分野に関するものだけを抜き出して,その卓抜した達見に感服してみても,皮膚科学において成し遂げたその不朽の偉業を理解することにはならない。彼は皮膚病全般を初めて科学的に分析して分類し,皮膚科学の礎石を設置したのである。
Willanの著述から,その思考の動きを行外に捕え,それを現在の言葉でいい表わすと,次のようになるであろう。渾沌たる状態にある皮膚病の概念を秩序立てるには,自然科学の方法によるしかない。そうとすれば,生物学においてその発展の端緒を掴んだ先縦に習つて,まず皮膚病の分類から始めなければならない。そしてこの分類は方法論的に形態学的観点からのみに限定するのでなければ,ついに纒まりのつかないことになるであろう。形態学的分類を行なうには,基準となる形態を定めなければならない。このためには基本となる単位的発疹を選別して,そのあるものを基準とするのが最も優れた方法であろう。その際,甚だ重要なことは,その単位的発疹の形態を厳密に定義し,分類の全般を通じて終始その定義を遵守することである。ここにおいて初めて,何びとも納得できる皮膚病分類の自然科学的体系が完成することになる。
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