特集 てこずった症例・難治症例にどう対応するか
耳領域
診断に難渋したCoccidioides immitisによる中耳真菌症症例
佐藤 えみり
1
,
瀬尾 友佳子
1
,
菊池 賢
2
,
長嶋 洋治
3
,
野中 学
1
Emiri Sato
1
,
Yukako Seo
1
,
Ken Kikuchi
2
,
Yoji Nagashima
3
,
Manabu Nonaka
1
1東京女子医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野,
2東京女子医科大学感染症科学分野,
3東京女子医科大学病理診断学分野
キーワード:
Coccidioides immitis
,
中耳真菌症
,
輸入真菌症
Keyword:
Coccidioides immitis
,
中耳真菌症
,
輸入真菌症
pp.937-940
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000001217
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はじめに
Coccidioides immitis(C. immitis)はCoccidioides posadasiiとともにコクシジオイデス属に分類されている二形性病原真菌である。土壌中に分節型分生子として存在し,建築,農耕,地震,豪雨などを契機に空気中に散布された芽胞を吸入することで気道感染を生じる。宿主体内では球状体へと成長し,その内部で形成する内生胞子が血行性に散布することで全身播種へも進行する。主にアメリカ西南部,メキシコ西部,中南米などの半乾燥地帯の土壌に生息し,わが国では確認される症例のほとんどが流行地への渡航歴を有する輸入真菌症である1)。真菌の中では最も病原性が強く,真菌感染症では唯一,感染症法で4類に規定されている。また,世界保健機構(WHO)が制定するバイオセーフティーレベル(BSL)ではレベル3病原体に指定されており,その取り扱いは厳しく制限されている。
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