特集 薬にまつわる疑問に答える
耳鼻咽喉科頭頸部外科の症状別の薬
嗄声
齋藤 康一郎
1
Koichiro Saito
1
1杏林大学医学部耳鼻咽喉科学教室
キーワード:
嗄声
,
薬物治療
,
エビデンス
Keyword:
嗄声
,
薬物治療
,
エビデンス
pp.1215-1218
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000000310
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はじめに
音声障害患者に対する薬物処方を考慮する前提として,音声障害に奏功する有効性にエビデンスのある薬物は極めて少ないことを知っておく必要がある。2018年のアメリカ耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会によるclinical practice guideline:hoarseness(dysphonia)(update)1)(以下,クリニカルガイドライン2018)における,evidence-based statementsのなかで,薬物治療に関しては,制酸剤:recommendation against,コルチコステロイド:recommendation against,抗菌薬:strong recommendation against,ボツリヌス毒素:recommendationと記されている。さらに,抗菌薬に関しては,351の研究を検証したCochrane systemic review2)でも,急性喉頭炎に対する効果は認められないとして,結核,非定型抗酸菌症,百日咳といった特殊な病態以外,少なくともルーチンな投与を避けることが強く推奨されているが,この論調は,音声障害患者に対する種々の診断・治療行為のエビデンスに関する2012年のレビュー3)(以下,レビュー2012)でも同様である。そこで本稿では制酸剤,コルチコステロイド,ボツリヌス毒素について述べる。
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