Japanese
English
特集 内因性調節因⼦と治療薬による体液量コントロール
各論
塩類喪失性腎症と高齢者の腎尿細管NaCl輸送
Renal salt wasting syndrome and NaCl transport in renal tubules of the elderly
柴田 茂
1
SHIBATA Shigeru
1
1帝京大学医学部内科学講座腎臓内科
キーワード:
塩類喪失性腎症
,
尿細管
Keyword:
塩類喪失性腎症
,
尿細管
pp.647-649
発行日 2025年11月25日
Published Date 2025/11/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000002224
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
塩類喪失性腎症(renal salt wasting syndrome:RSWS)は,腎臓からの食塩排泄亢進あるいは再吸収障害により細胞外液量減少をきたす疾患群であり,副腎からのアルドステロン分泌が低下している場合と,腎尿細管のNaCl輸送に異常がある場合とに大別できる。特に高齢者においては,前者によるミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症(mineralocorticoid responsive hyponatremia of the elderly:MRHE)が,腎性NaCl喪失を伴う低Na血症の重要な病態であるとされており,不適切抗利尿ホルモン分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone:SIADH)や副腎機能不全との鑑別が診断に必須である。腎尿細管のNaCl輸送の異常に由来するNa喪失性腎症については,Gitelman 症候群に代表される遺伝性尿細管疾患の存在が知られている。これらの疾患は,かつては若年時に発見される稀な病態と考えられていたが,最近の研究から,腎尿細管のNaCl輸送にかかわる分子の異常はこれまで想定されていたよりも高頻度に認められることが明らかになっており,遺伝子変異の保因者の数はさらに多いと推定される。健常時には異常を呈さない潜在的な遺伝的背景をもとに,加齢に伴うフレイルや摂食量の減少が重なって体液減少やRSWS様の病態が顕在化する症例も,一定程度存在する可能性がある。

© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.

